【夢叶~ユメカ~】『カナエ』番外編



【前編】


~下校時間~

男子生徒

「おい、見ろよ! 三好(みよし)と、向井(むかい)だぜ!」


男子生徒

「ヒュ~ッ♥ 相変わらず凄ぇ胸しているぜ!
 とてもJC…しかも1年とは思えない!
 全校生徒の中でも間違いなくTOP10に入るだろうな!
 うっひっひっひっ…♥」


キヨミ

「……。
 ね、ねぇ、ユメカ…男子の視線が…!」


ユメカ

「…ったく、ウザ。」


大熊先生

「…おっ!? 三好と向井か。
 おまえたち、まだ部活に入っていなかったな?
 どうだ? 陸上部に入らんか?
 陸上競技は、己との戦いだ!
 体力も付くし、精神面も鍛えられて良いぞ! わっはっはっ!」


ユメカ

「興味ありません。」


キヨミ

「…あっ! ちょっと待ってよ、ユメカ!」

「す、済みません、大熊先生。
 私も運動は苦手なので、入部は、ご遠慮させていただきます!

 それじゃ、失礼します! さようなら!」


大熊先生

「……。」

ちっ…正攻法では駄目か。 それに、三好も駄目だな。
ああいうやつに手を付けると、すぐにバレてしまう。
だが、向井は…
あいつは、超がつくほど真面目だから、弱みさえ握れば
意のままに飼い馴らすことができそうだ…ぐふふふっ…♥



~河川敷・堤防の通学路~

キヨミ

「はぁ…明日からベスト着てこようかな。」

「それにしても…
 どうして男子って、女子の胸ばかり見るのかしら。
 話をする時だって、チラチラ胸に目をやるし…
 もう恥ずかしくって死にそう。」


ユメカ

「男なんてみんなあんな感じだから、気にしちゃダメだよ。
 うちのまも兄だって、お母さんや、私の胸元を、興味深そうに
 ジロジロ見ているよ?」


キヨミ

「…! なっ!?
 まもるさんは、そんな人じゃないわ!
 うちのお父さんだって、そんなことしないよ!?」


ユメカ

「……。
 お父さん…か。

 キヨミんちのお父さんは、優しいし、イケメンだし、良く出来すぎなんだよ。
 そこら辺の男とは、全然違うもん。」


キヨミ

「…! あっ…ご、ごめん。」


ユメカ

「…何で謝るの?
 別に、私にお父さんがいないことは、もう気にしていないから。
 まも兄だって、いるし…」


キヨミ

「…う、うん。」

「…あっ! 私、今日はお店の手伝いがあるから先に帰るね!
 それじゃ、また明日!」


ユメカ

「うん! 頑張ってね!」

そっか…
確か、まも兄も今日は夜までバイトだっけ。



親友のキヨミと別れたユメカは、一人、堤防の通学路を歩いた。

「いいなぁ…キヨミんちは。」

気にしないとは言ったものの、両親に恵まれ、幸せそうなキヨミの姿を見ていると
ふと、寂しさが込み上げて来てしまう。

「お母さんは仕事だし、まも兄も夜までバイトなら、このまま家に帰っても一人…か。」

ユメカの足取りは…重かった。




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