【夢叶~ユメカ~】『カナエ』番外編





私は、ユメカ。 お母さんが付けてくれた名前で、≪夢を叶える≫と書きます。
名前に込められた深い意味までは分からないけれど、響きが可愛いから
ちょっと気に入っています。

家族は、会社勤めをしているお母さんと、大学生のお兄ちゃんの三人家族。
お父さんは…いません。 所謂、母子家庭というやつです。

お父さんは、私が生まれる前に、病気で亡くなったそうです。
でも…
私の本当のお父さんは、別にいるみたい。
お母さんが言うには、仕事の関係で知り合った人で、事情があって別れたのだとか。
私がお腹にいるのが分かったのは、その後だったそうです。

小さい頃は寂しくて…事実を知った時は、ショックを受けました。
けれど、今は、もう気にしていません。
お父さんという存在が最初からいなかった私にとって、“それ”が普通になってしまったのかもしれません。
そういうものだと慣れてしまったのかもしれません。

私には、お母さんがいるし、父親違いのお兄ちゃんも、とても優しくしてくれるから。



ねぇ、ユメカ。
登校中に、歩きスマホ…危ないよ?


…へ? あ…うん、そうだね。

ちょっと待って、週末までに、こいつのレベルを上げておかないと…それ!
まも兄と対戦する時に、また負けちゃうから…えい! あっ…!


もう!

……。

…で? まもるさんと、何のゲームをしているの?


…え? 『水晶物語Worldオンライン』


(エロゲーかい!?)


それにしても…
二人は、本当に仲良しだよね。 兄妹というか…恋人同士みたい。
そっくりだし…羨ましいよ。

でも、まもるさん…
勉強で忙しいはずなのに、うちのお店でバイトをして
家では、ユメカの相手までしているなんて…凄いね。


仕方ないよ、うち、貧乏なんだからさ。

それに…
まも兄は、勉強もできるし、優しくて、細かい所にも気配りができるけれど
私は、頭は良くないし、がさつだし…
どちらかというと、私よりも、キヨミの方が、まも兄に似ている気が
するけどな…
小さい頃から一緒に遊んできたから、影響を受けてない?


…えっ!? 私が、まもるさんに!?

に、似てないよ! 似ている訳がないじゃん!

そ、それに…
別に影響を受けたりとか、真似をしたりとかしている訳じゃ…!


ふふふっ♪

キヨミってさ…
子供の頃から、ずっと、まも兄のこと…好きでしょ?


…! ななな何言ってるのー!?
そそそそんなこと、ないないないってばぁ~!!




この子は、キヨミ。 私と同じJC
名前の通り、清らかで美しい女の子。私と違ってね。

近所にある≪パスターズ≫というレストランの一人娘で
私の幼馴染で、大親友。

私たちは、同い年で、誕生日も近く、小さい頃から
姉妹の様に一緒に育ってきたの。

そのせいなのかな?
私たちには、とても似ているところがあったりして
キヨミといると、何だか他人のような気がしないというか
近所では「双子の姉妹のようだね。」と良く言われていた。

キヨミのお父さんは、武術を習っていたらしく
運動神経抜群の、すっごいイケメンなの!

なのに、キヨミときたら、容姿は良いものの
運動神経は、からっきしダメで…
性格も、おっとりしているから、母親のアスミさん似
なのかな?

小さい頃から良くうちに来て遊んでいたから
まも兄とも、とても仲良しで…

でも…
最近の、まも兄を見るキヨミのあの目…
あれは、まさしく恋する乙女の目だよ♥


う~ん、大学生とJCの交際かぁ…
ちょっぴりキケンな香りがしますなぁ~。

まも兄を巡って、ミク姉さんとやり合う気があるのなら
私、キヨミを応援してあげるよ♪

まも兄ってね、ああ見えて結構エッチなんだよね♥
胸の大きい女の子とか大好きだから、キヨミならイケるんじゃね?


…なっ!? 胸!? もう、ばかーっ!!


町を流れる大きな川≪天川≫の堤防にある通学路を歩く学生たち。
日の当たる眩しい世界を歩く、希望に満ち溢れた若者たちを
魔物は、堤防の下の河川敷から、今日も人知れず、静かに見上げていた…。




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